2.4つの領域(1)~思考プロセス、インサイトパス、行動プロセス

「思考は容易だが、行動は困難である。そして、思考を行動に移すことは、世界で最も難しいことである。」ー ゲーテ
「知識は記憶に頼り、知恵は思考に頼る。」— ジョン・デューイ
視点を変える「メタ思考」
思考には4つの領域があります。前記事では「インサイト、思考、行動、記憶」の4つの領域についてお話ししました。メタ思考とは、これら4つの領域を個別に分析した後に全体を説明する方法と、4つの領域を総体として捉えた後に個別に分析する方法があります。
これらはメタ思考が一段高いところから俯瞰し、客観視する方法としてだけではなく、視点を変えて、上から下から、外から中から全体を観察し分析する方法です。さらに物理的な視点だけでなく、時間経過による思考の変化を時間的視点として分析する必要があります。
思考を情報の流れとして分析すると、情報処理の「入力→処理→出力」の直線的な流れに当てはめるのが一般的です。この流れには入力前の情報収集、出力後の評価や運用も思考の流れに含める必要があります。また「→」も思考の一部として分析する必要もあります。
論理的に考える「思考プロセス領域」
「思考」は「思う」と「考える」の熟語です。4つの領域を個別に分析するときに、「考える」から始めるとわかりやすいです。「考える」には必ず対象が必要であり、自発的または他発的に設定することから始まります。試験問題、AIへの指示などは対象そのものです。
考える対象を観察し、正確に、明確に理解することが最初の「考え」になります。次に「考え」の方向性を見出し、考える順番を決めます。考える順番を決めるときには、考える能力の源泉となる知識が必要になります。多くの場合は、知識の組み合わせで考えを進めます。
このように順番に考えることを「プロセス」といいます。プロセスの最後にはゴールが必要です。このゴールを「結論」とします。「考える」だけでは形ある具現化には至りません。言葉や記号、文字や数字などのエビデンス(根拠)を提示する必要があります。
これらの思考の流れは論理的な思考のプロセスとなり、「思考プロセス領域」で行うとします。
5つの「意」で思う「インサイトパス領域」
次はもう1つの「思考」である「思う」について分析します。「思う」は「考える」と対比して表すことがあります。「考える」は論理的で、「思う」は直感的、感覚的の他に、非論理的と表されます。視点を変えれば、「考える」が非直感的、非感覚的ともいえます。
「思う」の対象は、内発外発を問いませんし、自発他発も問いません。思う対象を設定しなくても思うことはできます。対象を設定しないで思うことを「モヤっとした感じ」と表すことにします。「思う」に順番はありません。同時に思うことも、バラバラに思うことも可能です。
「思う」のゴールは言葉とは限りません。言葉にならない音声、体や表情で表すこともできます。この深層心理を「インサイト」と呼び、マーケティングなどで使われています。インサイトには複数の「思い」があり、この思いを繋げる道筋(パス:path)をつけて「インサイトパス領域」としました。
詳しくは「インサイトパス領域」で「5つの『意』」として別途、説明します。
行動しながら考える「行動プロセス領域」
次に説明するのが「行動領域」についてです。この領域は身体的な行動自体を表すのではなく、行動をするときの思考です。「思考→記憶→行動」という直線的流れでは、思考と行動は分離していますが、最初の思考は静的な思考で、行動は動的な思考と考えます。
行動するときの思考は、前述の「思考プロセス領域」の思考とは異なります。行動しているときに、手順を順番に考えることは必要ですが、それ以上に大切なのは速さ、スピードです。行動の速さではなく、思考の速さが必要になります。
ふだん歩いているときに「右足、次は左足」とは考えません。あらかじめ考えをパターン化することによって思考の速さを維持しています。これは1つの例であり、行動時の思考プロセスは「思考プロセス領域」とは異なり、「行動プロセス領域」とします。
詳しくは「行動プロセス領域」で「テトラモデル」として別途、説明します。
論理的思考が得意な「AI」
ここで重要なのは、「インサイトパス領域」「思考プロセス領域」「行動プロセス領域」で行う思考は、方法も目的も異なるということです。しかし、メタ思考としては目的は一致しています。それは、生存本能による思考とより良い社会を作るという思考です。
現在までの人間社会は思考の進化に沿って、順を追って人間に最適化された社会を作り上げてきました。思考の進化には、ときおり視点が変わるような出来事が起こり、一気に思考の進化が進むことがあります。これが時代のパラダイムシフトです。
直近で起きた思考のパラダイムシフトが、普及型AIの登場です。AIは論理的思考が得意であり、一般的な人間の論理的思考より進歩しています。人間の思考の進化は、AIの思考の進歩に追い付けないのが現状です。むしろ追いつくより適切な利用が人間の思考の進化に良い影響を与えるのではないかと考えています。
メタ思考モデルを解説する上で、AIの存在を抜きには語れません。現在のAIは「思考プロセス領域」と次にお話しする「記憶(中枢)領域」に大きく影響を及ぼします。この影響という懸念をリスクとするか、理想とするかは人間のメタ思考にかかっています。
