人生後半戦を考える上で、重要な事項が3つあります。
1.仕事と働き方
2.生活と暮らし方
3.人生と生き方
今回は「仕事と働き方」を、次は「人生と生き方」を、その次に「かしこく生きる」をテーマに取り上げます。
人口減少と高齢化の進展
「仕事と働き方」に大きく影響するのが、労働人口です。そして労働人口の大元になるのが総人口です。
日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに減少を続け、2023年には1億2435万になっています。
65歳以上の人口割合を示す高齢化率は29.1%、75歳以上の後期高齢化率は16.1%です。
15歳未満の人口が1417万人で、総人口に対する割合は11.4%になり、15歳から64歳までの生産年齢人口は7395万で59.5%です。
生産年齢人口の負担増加
つまり、非生産年齢人口と生産年齢人口の割合は、4:6になります。バブル景気が終わった1990年の非生産年齢と生産年齢の人口割合は、3:7になります。
非生産年齢人口を生産年齢の人口で支えるためには、2023年は4÷6=0.67で1990年は3÷7で0.43です。2023年は1990年に比べて1.5倍以上の負荷がかかっていることがわかります。
仕事と働き方の見直しが必要
ただし、生産年齢人口は年齢で区切っているので、労働意欲がある人を対象とした労働力人口とは異なる概念であり、産業構造や労働環境の変化も踏まえる必要があります。
ここで理解しなければならないのは、国の基盤となる人口構造の変化だけを見ても、仕事と働き方は変えなければならないということです。
人生100年時代への転換が必要
人生後半戦の仕事と働き方は、人口の4分の1が75歳以上になる社会を前提に考えなければなりません。
そのためには、「教育-仕事-引退」というステージを1回で終わる人生から、これらのステージを複数回繰り返したり、同時に複数のステージを行う人生へと転換できる社会環境が求められています。
また、避けて通れない収入を伴う仕事は、月収や年収よりも生涯収入という考え方に変えるべきかもしれませんし、そのためには健康を維持する考え方も変えざるをえないかもしれません。
未来を見据えた議論が重要
人口減少や高齢社会については議論されることは多いのですが、どちらも避けられない現実となっています。これからは過去への対応と同時に、未来を想定した人生設計や国の在り方をもっと議論すべきではないでしょうか。
そのうえで、人生後半戦の仕事と働き方を改めて考える必要があると思います。
労働の3つの形態
仕事と働き方に共通する労働は大きく3つに分けられます。
1.収入を伴う仕事のための社会的な労働 ⇒ 公務、民間などの職業
2.収入を伴わない仕事のための社会的な労働 ⇒ ボランティアなど
3.生活するために必要な個人的な労働 ⇒ 家事、子育て、介護など
また労働には、労力、知識、技能などの能力及び習熟度によってレベル分けされます。専門家や職人、玄人や素人、プロやアマなどのように使われています。
人生後半戦における労働形態
では、人生後半戦での仕事と働き方とはどのような労働を指しているのでしょうか。
50歳から人生後半戦とすると、収入を伴う職業として働いている人がいます。現役世代とも称され、組織の賃金労働者、自営や個人で営んでいる人を指します。
かつては、現役を離れて引退し余生を過ごすという人生後半戦の送り方が多かったと言えます。
しかし、現代ではダイバーシティ(多様性)とインクルージョンの観点から、本人が働く意思があれば就労することも可能になっています。
ただし、健康上の理由や認知能力などの理由により、働く場が限られることもあります。
職業としての労働の特徴
職業として働く場合には、対価として得られる収入のために、様々な条件を守らなければなりません。多くは就業規則などにより労使間で交わされますが、常識や慣例などもあります。
日本では、新型コロナ禍を契機に、在宅ワークを始めとして様々な働き方が試され、多様な働き方が認められるようになってきました。
人生後半戦になると、収入を目的として働くことも可能ですが、実際には70代には現役から引退する人も多いことがわかっています。
働けるうちは働きたいという人もいますが、そのためには健康管理や時代に合った働き方を身につける必要があります。
ボランティア活動の特徴と留意点
収入の伴わない仕事をボランティアと称することがあります。職業とボランティアの違いは、収入の有無だけではなく、努力や制約の違いがあります。
ボランティアは自分のできる範囲で仕事をするという自由度がある一方で、労働の対価が収入に反映されないので、仕事のレベルを一定に保つことが難しくなります。
ボランティア活動を主宰する側、ボランティアの恩恵を受ける側と、ボランティアに参加する側とのギャップが生じるのが現実です。
人生後半戦にボランティアを行うときには、主導権は自分ではなく相手にあることを十分に理解する必要があります。
家庭内の生活労働
収入の伴わない仕事に生活の中の労働があります。家事全般の労働の他に、子育て、最近では介護も生活労働の一部になっています。
かつては、専業主婦、家事手伝いなど、家庭内労働を主に行う立ち位置がありました。現在では、多くの家庭内労働が機会に置き換わり、また、ひとり暮らしも多くなったので、この立ち位置も過去の呼称になりつつあります。
子育てや介護も専門の施設がありますし、家事だけではなくこれらの代行を行う職業も増えてきました。近い将来には、ロボットとAIが家庭内のほとんどの労働を行えるようになるでしょう。
人生後半戦の過ごし方
人生後半戦になり、多くの人が70代になると収入のための仕事を少なくし、ボランティアや家庭内の仕事をして過ごすようになります。趣味や娯楽、社会学習や文化活動、健康増進などで過ごすと言われています。
昭和中期の核家族化が、現代では高齢者の一人暮らしや、夫婦だけで暮らしをもたらしています。結果的に、個人の時間が増え、自分のペースで過ごすことが、老後の楽しみとなっているのかもしれません。
後期高齢者人口の増加
社会的には75歳から後期高齢者となります。後期高齢者の総人口に対する割合を後期高齢化率とすると、2023年は16.1%ですが、2040年には20.5%、2055年には24.7%と4人に1人が後期高齢者になると予測されています。
繰り返しになりますが、人生100年時代とは、人口の4分の1が75歳以上の時代だとも言えます。常態化する高齢社会では、75歳以上の世代が社会に与える影響は大きく、仕事や働き方にも影響が出ることは避けられません。
シンプルに考える人生後半戦の仕事と働き方
人生後半戦の仕事と働き方をシンプルに考えると次のようになります。
仕事は収入の有無で分けることができます。働き方は個人的か、社会的かで分けることができます。この2つの分類により4通りに分類できます。
ただし、収入がともなう個人的な仕事とは、自分で自分に対価を支払うことになりますので、実際にはありません。また収入と謝礼との違いもあります。したがって4通りではなく3通りになります。
健康状態による就労継続の難しさ
多くの人は70代で収入を伴う仕事から引退を選ぶようですが、一方で、働けるうちは働きたいという人も多くいます。しかしながら、健康状態を考えると現実的ではありません。
社会的責任を伴う仕事の配慮事項
また、社会的な仕事とは他社に対して責任を伴う仕事ですので、途中で頓挫しないように配慮しなければなりません。そうなると健康管理や引き継ぎを想定しながら仕事をすることになります。
3通りの組み合わせ
人生後半戦の仕事と働き方は、次の3通りの組み合わせになります。
1.収入を伴う仕事のための社会的な労働 ⇒ 公務、民間などの職業
2.収入を伴わない仕事のための社会的な労働 ⇒ ボランティアなど
3.生活するために必要な個人的な労働 ⇒ 家事、子育て、介護など
仕事と生活のバランスシフト
人生後半戦の仕事と生活のバランスは、仕事重視から生活重視に徐々に変わってきます。
次の記事の「生活と暮らし方」で触れますが、男性と女性、独居と夫婦または家族と生計をともにするかどうかも、仕事と働き方に影響してきます。
・高齢化の推移と将来推計(令和5年版高齢社会白書)
・高齢期の暮らしの動向-就業状況(同上)
・高齢期の暮らしの動向-社会参加(同上)
・統計からみた我が国の高齢者-PDF(総務省)
・80歳で就職活動も“厳しい現実”(Youtube-音量注意)
・「シニアが牽引するボランティア」のウソ、ホント(シニアマーケティング研究室)