常態化する高齢社会と持続可能な社会保障制度 – 国民の意識改革なしには実現できない

人生後半戦を過去・現在・未来で捉える – 高齢化に向けた意識改革の重要性

 

人生100年時代には、人生後半戦とは言っても、現段階で人生後半戦に入っている人もいれば、これから人生後半戦を迎える人もいます。
したがって、人生後半戦を考えるには、過去、現在、未来の人生後半戦について考えなけばなりません。1945年の戦後から3つの時代に分けて考えてみました。

 

過去の人生後半戦(高度経済成長期~1990年代)

第二次世界大戦後からバブル景気が終わった1990年代までの高齢者像は、「退職後は経済的にも時間的にも余裕のある引退生活を送ること」が一般的でした。

しかし、平均寿命が延び、健康管理が進み、高齢者はマイナーな存在ではなくなり、今までのような発想では対応できなくなってきています。

現在の人生後半戦(1990年代から2020年代)

バブル景気以降の日本経済の停滞、大地震や新型コロナなどの災害、世界情勢の変化が生じ、これらの重要な問題を解決しなければならなくなっているのが現在どいう時代です。

この間にも日本の高齢化率は上がり、同時に少子化と人口減少という問題にも取り組まなければなり、問題の原因が複雑化しているのも事実です。

未来の人生後半戦(2020年代~2040年代)

現段階でも先進国全般で深刻化する労働力不足の解決策として、高齢者の活用が期待されています。同時に、医療や介護、年金などに関心が高まる一方で、財源や人的資源については不安視されています。

未来の人生後半戦について考えるには過去から現在にかけての発想とは異なった考えが必要になっています。そのためには高齢者自身がどのように考えるべきかという示唆が必要になります。

 

シンプルに考えると次の2つの事項になります。

・第一に、人口動態の変化は世界共通の課題であり、高齢化対策には国を超えた連携が必要不可欠です。高齢者は単なる退職者ではなく、社会の重要な一員として能力を発揮できる存在と捉え直す必要があります。

・第二に、先進国の高齢社会化が進む中で、いかに生きがいと経済的自立を両立するかが大きな課題となっています。積極的な学びと行動を通じて、新しい生き方を切り拓くことが求められています。

 

世界が高齢社会にに変わりゆく – 高齢者という分類

 

高齢社会とは、WHO(世界保健機構)が定めた65歳以上の人口割合によって定めた呼称です。したがって、人口の多寡や国の規模の関係なく、一定の割合を超えれば高齢社会になります。

高齢社会には段階があり、総人口に対して65歳以上の人口が7%超で「高齢化社会」、14%超で「高齢社会」、21%超で「超高齢社会」と呼びます。日本は28%を超えていますので「超高齢社会」となります。

2020年の世界の総人口は78億4,095万人で、高齢化率は9.4%です。すでに世界全体が高齢化社会になっています。高齢社会は、高齢者に注目が集まりがちですが、人口構造の呼称にすぎません。

世界人口は2060年には100億人を超え、その後は人口の延びは少なくなると考えられています。つまり、日本の少子化と同じ現象が世界でも起こり、高齢社会は定常化すると予測できます。

また、世界的にも寿命が延びることを考えると、高齢社会は珍しいことではなく、各国で人生設計を「人生100年時代」として見直しが行われるようになるでしょう。

同時に、労働力人口という考え方も変わり、AIやロボットという労働代替力も普及することになります。そのときに、高齢者という分類自体が意味をなさなくなるかもしれません。

 

社会保障の根幹に関わる課題 – 経済と国民の意識改革

 

日本の高齢者の経済的側面を支えているのは、「医療、介護、年金」の社会保障制度です。これらの社会保障制度は、利用者の負担と未利用者の負担によって構成されています。

社会保障制度は当初の人口構造を前提に組み立てられましたが、その後の人口変化に対応できる柔軟性が欠けていました。もしくは、柔軟性を補う対応が遅すぎたとも言えます。

それぞれの社会保障制度において、人口構成の変化に対応すべく、何度となく調整が行われているのが現状です。しかしながら、「寿命の延伸、高齢化率の上昇、少子化、人口減少」に適応できているとは必ずしも言えません。

社会保障の基盤となる日本の経済は、海外との密接な関係で維持されています。したがって、国際情勢への対応だけではなく、世界を俯瞰したうえでの経済対策を行わなければなりません。

にもかかわらず、社会保障制度の見直し、将来に向けての資産形成、高齢者自身の労働など、主な解決策は高齢者よりに考えられており、経済対策としては偏っています。

そして、このような対策を実施するにも、国民全体の意識改革、特に社会保障制度の利用者となる高齢者の意識改革が必要です。そのためには、国民全体への再教育とも言えるパブリック・リレーションズが必要になっています。

 

年金制度を維持するために – 社会インフラの重要性

 

かつて、年金制度を「100年安心」と称されたことがありました。「100年安心」が「100歳まで老後の生活は安心できる」と解釈され、「人生100年時代」と謳われるようになって、さらに浸透しました。

年金改革における「100年安心」の趣旨は、高齢社会が常態化する未来社会において、現役世代の負担を少なくするために、受給額を徐々に少なくしようという目的を大きく取り違えられてしまいました。

年金制度は社会保障制度の一部で、実際には行政サービスとして実行されています。物理的な交通網やエネルギー網と同じように、行政サービスも重要な社会インフラとして考えられます。

新型コロナ禍では、多くの社会インフラとなっているサービス業に従事している方々が、エッセンシャルワーカーとして認められました。高齢社会ではますますサービスインフラが重要になります。

現在の社会インフラの重要性を認識するためには、まず学ぶ機会を増やす必要があります。前述の年金制度についてなら、年金受給者も現役世代も一度は真摯に学ばなければなりません。

また、行政サービスを提供する側も、書面での通知だけではなく、講演や勉強会などの学ぶ機会を提供すべきでしょう。

年金制度は、現在の高齢者に経済的な支援を行う制度である一方で、また、将来的にもこの制度を維持できるように現在の高齢者も責任を負わなけらばなりません。

 

人口構造に合った社会制度に変える – 社会保障制度を支える経済

 

年金制度の財政収支状況は、令和4年度の場合は収入が54兆6千億円、支出が53兆7千億円、年度収支が9千億円の黒字となっています。令和4年度末の繰越額は前年度からの繰越額を含めて250兆4千億円です。

この繰越額を、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用しています。2023年度までの累積運用実績は132兆4千億円ですので、繰越額のおよそ半分は運用によるものと考えることができます。

ただし、この額を100年で割ると1年当たりは2兆5千億円になります。令和4年度は9千億の黒字でしたが、赤字になった場合の補填するためにも、繰越額は重要にります。

年金制度を始めとした社会保障の機能には「①生活安定・向上機能、②所得再分配機能、③経済安定機能」の 3 つがあります。経済が不安定なときも、恒久的な保障が重視されます。

このような社会保障の考え方は1945年以降に本格的に始まり、経済の成長とともにより充実した制度になってきました。しかしながら、経済成長に陰りが見えると、自ずと社会保障制度も変革しなければなりません。

人口構造を大きく変えることはできませんので、人口構造に合った社会制度に変えるこよは必然になります。

そのためには、①社会保障について学ぶ、②経済を安定化させるために労働力を増やす、③過去の社会に対する補填ではなく、未来の社会に向けての制度を構築するなどが考えられます。

 

白書は大人の教科書

 

行政各機関が作成している白書は、国が国民に対して報告している貴重な資料です。言い換えれば「大人の教科書」です。日本の社会保障が大きく変わっていることに改めて気付くはずです。

まずは、厚生省が労働省と統合される前の平成12年度厚生白書と、平成13年から統合された厚生労働省による令和2年度の厚生労働白書の社会保障に関する報告を読んでみてはどうでしょうか。

 

・平成12年度 厚生白書 [PDF]
日本の社会保障の仕組み(2000年)
・令和2年度 厚生労働白書 [PDF]
令和時代の社会保障と働き方のあり方(2020年)

 

 

私たちが目指すべき社会は高齢社会の解消でもなく、少子が解消された社会でもない。
高齢社会でも少子化でも耐えれる社会を構築することである。
これが社会のために働くということ。