7.記憶中枢領域~記憶情報の分岐を行う中枢

「多くの人間は、その記憶力があまりにも良すぎるという唯一の理由から、思索者になれない。」 ー ニーチェ
「記憶とは、ある出来事が起こった時のことではなく、それを最後に思い出した時のことを覚えているにすぎない。」ー 不詳
覚える、思い出す、忘れる
「記憶」の仕組みは、短期記憶(海馬)と長期記憶(大脳皮質)などの専門用語を用いた研究は脳神経科や脳科学で行われています。ここではメタ思考モデル「SimpleWize」で「記憶」をどのように扱うかを示します。
「記憶」には「覚える、思い出す、忘れる」の3つの機能があります。これらを効率よく働かせるためには、記憶情報の整理が行われます。どのように整理されるかは、専門分野に任せることにして、記憶の整理方法の一つとして外部メディアへの記録があります。
記憶力がよいと言われるのは、思い出す能力が優れている人です。おそらくは容易に速く思い出せるように記憶が整理されているのでしょう。このように考えると、前述の3つの機能の他に記憶を「整理する」機能があることがわかります。
記憶の分岐をコントロールする中枢
「記憶中枢領域」は「インサイトパス領域」「思考プロセス領域」「行動プロセス領域」の3つの領域と直接つながり、情報の出入りが頻繁に行われます。この3つの領域の情報交換は、基本的には記憶中枢領域を経由して行われます。記憶中枢領域の役割は、単に記憶を保管、保存するだけではなく分岐先を指定する機能があると考えています。
例えば、「インサイトパス領域」から記憶中枢領域に入ってきた情報は、「思考プロセス領域」と「行動プロセス領域」の分岐が考えられます。もしくは、「インサイトパス領域」に戻すか、そのまま「記憶中枢領域」で保存するかの分岐もあります。
このように「記憶中枢領域」は記憶を保存するだけではなく、記憶の分岐をコントロールする中枢としての役割もあります。一般的には「記憶する」は覚えることだけを意味することが多いですが、実際の記憶情報は一か所に留まるのではなく、記憶中枢領域でコントロールされ、常に活性化していると考えます。
「思考プロセス領域」への分岐
「記憶中枢領域」での分岐は、記憶の種類によって次の場所への分岐を判断します。記憶の種類は2分類4種類です。長期記憶と短期記憶、優先記憶と劣後記憶の4種類です。分類の種類も4種類ですが、稀に1つの分類にしかできないこともあります。例えば、短期記憶なのだが優先か劣後かわからないときに、どのように処理するかは個人差があります。
このような分岐のルールの中で特に重要なのが「思考プロセス領域」への分岐です。思考プロセス領域では論理的思考を行うために、まず命題が何かを特定する必要があります。この命題はインサイトパスで「意義」となった情報であり、この情報がないまま論理的思考は行われません。たとえ論理的思考らしきことが行われても、結論は出せないでしょう。
他にも「記憶中枢領域」における分岐のルールは人それぞれで異なります。単独で思考を重ねるときには内部的なルールですが、他者と共同で思考を行う場合は、この分岐のルールを確認しておく必要があります。これはコミュニケーションのルールよりもさらに根本的なルールの確認になります。
「メタ思考モデル」の中心
「記憶中枢領域」の中でも「忘れる」の機能についてはあまり語られません。記憶する量には限界があるから、消去して記憶領域を空けるとも言われますが、記憶は意識的に消去しようとしても消去はできません。消去ではなく記憶の上書きであり、ここで部分的な上書きをすると記憶内容が変わったのか変わっていないのかがわからなくなることがあります。
記憶は使われなければ自然消滅します。記憶を消去するのではなく、劣後記憶とすることで思い出さないようにすることが記憶の削除としては適切です。劣後記憶にする方法は、どのような記憶を優先するかという「意志」が必要です。視点を変えると、「インサイトパス領域」での5つの「意」を算式と情報の変容ではなく、「記憶中枢領域」へ移行するセマンティックな行いと考えられます。
メタ思考モデルを考察する上で、「インサイトパス領域」「思考プロセス領域」「行動プロセス領域」の機能を理解することは重要です。ただし、メタ思考モデルへのアプローチの仕方としては、自分の記憶が「記憶中枢領域」でどのように扱われているかから始める方法もあります。なぜなら、メタ思考モデルとしてのSimpleWizeは、「記憶中枢領域」を中心に据えているからです。
AIの論理的思考の元は人間の思考
AIが「思考プロセス領域」にて論理的思考を行うことは可能ですが、「命題」すなわち「意義」を自ら持つことができません。現在のAIは、記憶領域の役割をLLMが担っており、論理的思考をアルゴリズムで、自然言語による会話ロジックを再びLLMとアルゴリズムで行っています。
論理的思考にありがちな閉ざされた環境での思考は、AIも人間も同じで、偏った論理と結論を導き出します。RAGによるGroundingでの外部検索も論理に整合する情報を中心に収集することで結論を導き出します。これでは客観性は低くなり、本来の論理的思考の目的を満たしません。
それでもAIが出す結論を高く評価するのは、LLMで学習した知識が過去の人間の知識であること、その知識を人間しか持てない「意義」に沿って「命題」を立て「結論」を導いても、その結論を受け入れるかどうかは人間次第と振り出しに戻ります。
人間が必要とするのは論理的な「結論」ではなく、論理的な思考を行動に移したときの「結果」であることを忘れてはなりません。
