閑話休題:令和6年度高齢社会白書「第一章 第一節 高齢化の状況」を読んで

高齢社会は高齢化が進んだ社会で、高齢者のための社会ではない

 

高齢社会白書を読みだして10年以上経つ。2024年版と2014版年の「高齢化の推移と将来推計」の図を比較すると次のようになる。

 

2024年版2014年版
(単位:万人)2025年推計2060年推計2025年推計2060年推計
総 人 口12,0129,61512,0668,674
65歳以上の人口3,6523,6443,6583,464
15ー64歳の人口7,3105,0787,0844,418
14歳以下の人口1,3638931,324791
高 齢 化 率29.637.930.339.9

 

元になっているデータが国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計を元にしているもので、元データによっては35年後の高齢社会は異なった姿になるかしれない。

 

高齢化の状況から考えるべきこと

a.現段階の高齢社会とは人口バランスが65歳以降の層に移行している人口構造を指す
b.どの時代にも高齢者層だけでなく各年代層が存在し、それぞれの年代層に課題がある
c.高齢者に向けての対策と高齢者自身がどうあるべきかの対策が必要になる

高齢社会という観点から日本社会を見るだけでなく、人口バランス、年齢層の細分化、各年齢層の相関関係、社会人としての高齢者を考えなければならない。

 

他国との比較より日本の独自性

 

「世界人口白書2024」によると、日本の人口は1億2,260万人で世界第12位である。1億人以上の国は15ヵ国あり、1位はインドの14億4,170万人、2位は中国の14億2,520万人、3位がアメリカの3億4,180万人である。

高齢社会白書によれば、2020年時点の高齢化率は日本 28.0 、インド 6.7、中国 12.6、アメリカ 16.2となっている。人口が1億を超えている国で高齢化率が20%を超えている国はない。

海外との比較は日本の高齢社会の特殊性を物語っており、他の国が自国の将来のために日本に学ぶことはあっても、日本が他の国に学ぶには条件が違い過ぎる。

 

国際比較から考えるべきこと

d.世界から見ると日本の国民性は特殊であると評されることが多い
e.国それぞれに地理的環境と国民性があり、高齢者対策にもこれらを考慮しなければならない

 

一家族一世帯の核家族から一人一世帯へ

 

世帯は生計を共にし、居住地で生計を営むという基本的な考え方がある。現代社会では、個人の移動や流通の範囲が後半になっているので、生計と居住が一致しているとは限らなくなっている。

生計と居住地、家族と世帯のあり方が多様になると、居住場所と世帯人員だけで「家族と世帯」の形態を把握できなくなっている。

個人がどのような暮らしを望み、そのために必要な生活の糧となる生計の立て方と、居住する地域と場所を個別に調査しなければ「家族と世帯」の実態を把握できない。

 

「家族と世帯」で考えるべきこと

f.家族と世帯を同一視で考えるのではなく、家族と個人、家族と生計、世帯と居住地を個別に考える
g.そのうえで、個人が望む環境を実現するにはどのようにすべきかを考える
h.高齢者が望む環境と現実との差を埋めるのが本来の高齢者対策になる

 

高齢化にも地域格差はある

 

日本の自治体には47都道府県と、1719市町村が存在する(東京23区は1市と計算)。東京23区は特別区の他、法律で定められている20の政令指定都市、62の中核都市で総人口の半数を占める。

言いかえれば、105ヵ所の都市部の自治体で日本の人口の半数を占める。高齢社会の対策を考えるには、全国規模と自治体規模、特に人口流入都市部では自ずと変えなければならない。

高齢化には地域差があり、自治体間の移動だけではなく、同じ自治体内の移動の他にも、経済ブロック内での移動によって発生することもある。

 

地域別比較から考えるべきこと

i.日本人口減少は総人口の減少と地域移動によって発生する人口減少がある
j.人口の局地化が進み、都市化高齢社会と過疎化高齢社会が存在する
k.高齢社会の問題は地理的な地域性よりも、高齢化率と人口増減率によって分類できる

 

少子高齢化が高齢社会の問題ではない

 

「基準になる人口+出生者数-死亡者数」が次の期間の基準となる人口になる。前述のように地域間で差が生じるのは、「基準になる人口+出生者数-死亡者数+流入数-流出数」となる。

これらを世帯という単位で考えると、出生者数と流入数の増加は少なく、死亡者数と流出数の増加が多くなる。つまり一人暮らしは自然増になることは避けられない。

人口減少や少子化を問題視するのは、経済レベルすなわち生活レベルの維持を問題視することが根本にある。高齢社会の問題も65歳で経済活動から外れるかのような考え方が問題の原因になっている。

 

高齢化の要因から考えるべきこと

l.国レベルでの高齢化の要因は、出生数と死亡数の相関関係にある
m.地域レベルでの高齢化の要因は、流入数と流出数の相関関係にある
n.高齢化の要因が社会問題の原因ではなく、経済問題の原因になっている

 

高齢化率は28.9%、社会保障給付の60.1%を占める

 

令和3年度の高齢者関係給付費は、社会保障給付費138兆7,433億円の60.1%を占める83兆4,322億円となった。令和3年の高齢化率が28.9%なので、社会保障が高齢者に偏っていることがわかる。

社会保障給付費は、給付額だけはなく、原資となる負担額についても考える必要がある。令和6年度の予算ベース137.8兆円の負担は、被保険者保険料31.5%、事業主保険料が28%、公費が40.5%となっている。

高齢化社会の問題点の1つに公費としての社会保障費の増加があるが、問題の本質は社会保障給付を維持するための保険料の増加にある。

高齢社会は社会保障だけで維持されているわけではない。国民生活を社会保障の側面だけで考えるのではなく、社会保障と税を合わせた国民負担率や従属人口指数についても議論すべきだろう。

 

高齢化の社会保障給付費に対する影響から考えるべきこと

o.社会保障は国家予算の歳入と歳出に大きく影響を与えている
p.高齢社会という側面だけで考えるべきではない
q.高齢社会を表す指標は高齢化率ではなく、従属人口指数である

 


 

白書とは国の管轄機関が国民に対しての報告書のようなものだ。報告書は往々にして、良いことは過大に、悪いことは過小に表現する。

したがって、掲載されているデータをもとに本質を読み解く必要がある。特に同じ数値でも量と質の違いには注意したほうがよい。

今年の高齢社会白書は読みごたえがあった。これからが本格的な高齢社会が始まるには、いささかの不安はあるが。