ソリッドモデル~習慣のためのスパイラルな思考法

「思考に気をつけなさい、それは言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それは行動になるから。
行動に気をつけなさい、それは習慣になるから。
(以下、略)」— マザー・テレサ
4つの「面」による思考
ワイヤーモデルは「点」と「線」で構成するのに対し、「ソリッドモデル」は4つの「面」で構成します。ワイヤーモデルとの大きな違いは、ソリッドモデルは点(頂点)と線(辺)を持ちません。幾何学的にはあり得ませんが、概念的には個別の正三角形の「面」だけで構成します。
4つの「面」は独立していますが、隣接して立体を構成し、内部空間を有します。この内部空間が「ソリッドモデル」の思考空間となります。4つの面は独立しているので交換可能なこともソリッドモデルの特徴です。ワイヤーモデルからソリッドモデルをイメージするのではなく、異なるテトラモデルとして理解する必要があります。
「ソリッドモデル」の内部空間は、必ずしも何もない「無の空間」ではありません。むしろ多くの要素と思考が行き交う空間です。ソリッド(solid)は「固体」を意味しますが、「ソリッドモデル」の内部は、単なる流動的な空間ではなく、要素が一定の条件で循環する整然とした規則性を持ちます。
時間は循環する
「ソリッドモデル」とテトラ思考が持つ「時間」の関係性は、「時間は循環する」という考え方に基づきます。これは物理学的時間でもなく、心理学的時間でもありません。思考習慣における「時間」です。例えば、「同じことを何度も考えてしまう」ようなことです。
実際には、同じ時間を繰り返すのではなく、同じ行動を繰り返すことを表します。前述の「同じことを何度も考えてしまう」のは、思考が行動化しているとも考えられます。習慣、ルーチンなどの繰り返し行動は、一定の条件によって、思考に頼らずに行動しています。
例えば、同じ時間に目が覚める、朝に目覚めてから覚醒するまでは同じ行動をするなど、日々の生活には、思考に依存しない行動が多くあります。このようなパターン化した行動は、ソリッドモデルの内部空間に一定の条件が半固定化されているのかもしれません。
FOR WHAT?
ワイヤーモデルで例とした「ワークライフバランス」の、思考から行動するまでをソリッドモデルで解説します。ソリッドモデルは4つの面で構成されますので、ワイヤーモデルと同様に「仕事、生活、健康、お金」を各面に設定します。
仕事に関する要素を面の上に設定します。面の正三角形の形状に合わせて、要素を3点に絞ることはありません。例えば、「収入、自己形成、社会的意義、人間関係」のようになります。「WHY-HOW-WHAT」よりも「何のために(FOR WHAT)」と考えたほうが設定しやすいです。
仕事の面から内部空間に「収入」を投げ込むと、生活の面からは「支出」、お金の面からは「収支」、健康の面からは何も出てきません。このような状態で考えると「予算」の思考にたどり着いたとします。
もし、健康について常日頃から考えているのであれば、「健康維持に必要な予算」が投げ込まれたかもしれません。多くの人は健康不安を感じてから健康予算を考えます。このようにして「面」に要素を持ちながら、継続的に考えるのがソリッドモデルです。
循環から螺旋へ
ソリッドモデルが対象にする行動とは、多くの人が繰り返し行っている思考です。同じ行動であれば習慣やルーチンとして、思考も定型パターンに陥りがちです。これは思考が行動を作るのではなく、行動が無思考化してしまう可能性もあります。この無思考化は外部の変化へ気づくことも遅らせてしまうことがあります。
しかし、行動が同じでも無思考化せずに、思考自体を習慣化することで、外部だけでなく内部の変化にも気づき、一見同じような行動でも、細部が違っていたり、目的が違っていたりすることがあります。これらは、個人ではアスリートの行動に、組織では老舗が長年継続する理念に見られます。
「循環する時間」とは、同じことを考え、同じことを繰り返すことではありません。時間が循環すると考えることで、「何かを変える必要はあるか」という問いを立てることが、長い時間をかけて個人の進化に結びつき、より長い時間をかけて人類の進化になったと考えます。循環は螺旋的な思考を生みます。
「面」を交換する
ソリッドモデルの内部空間で行われている思考は、「インサイトパス領域」の瞬間的な繋がりから発生するのではなく、また「思考プロセス領域」での論理的で強固な構造を目指すのではなく、臨機応変の思考が必要になります。この臨機応変の思考を過去の積み重ねではなく「面」の交換で対応します。
突発的な事象、パラダイムシフトのような劇的な変化が生じたときには、「面」を交換せずに対応をしようとしますが、繰り返してきた思考と行動は簡単には変わりません。例えば、前述のワークライフバランスの例で「健康」を「感染防止」と置き換えたのが、新型コロナでの対応です。
最初は、「三密、行動変容」などのワードで社会活動を抑制しようとしていましたが、ワクチン接種が進むにつれて「感染防止」に変え、さらに感染しても「発症抑制」へと移行したのは「面」の交換を行った証左です。「面」の交換を行うかは個人に任されていましたので、その結果には個人差が出たのも、事実として受け入れなければなりません。
ソリッドモデルは「循環する時間」を習慣やルーチンだけでなく、繰り返してしまう行動に対しても有効です。人生という長い時間については、次のコアモデルで解説します。
