人生後半戦を見据えた時間の捉え方
人生を考える上で、私は「お金・健康・時間」に3つを基本にしています。人生後半戦になっても基本的な価値観は変わりません。しかし、時代とともにこれらの捉え方は変化しています。特に「時間」への意識の違いは大きくなってます。
今回は「時間」についてお話ししたいと思います。時間には次のような特性があります。
1.一般的に「時間」とは、地球上の時間を指す 2.したがって、時間は「誰にでも平等」という考えられる 3.時間は単位であり、1日を超える場合は「期間」という 4.時間は対象によって「速度」に置きかえられる 5.対象に対する速度の計算は「対象÷時間」という式で計算される 6.時間の流れは一方向で、「過去・現在・未来」に分けられる 7.個人が決める「主観的時間」と共有する「客観的時間」がある 8.人間が直接持つ時間は生存期間すなわち寿命であり「有限」である 9.時間には絶対的時間と「相対的時間」がある |
これらを踏まえて人生後半戦の時間使い方を考えてみたいと思います。
時間とお金、健康との関係
「時間」と前回までにお話しした「お金」と「健康」の関係を簡単に説明します。
本来、お金自体には価値はないですが、様々なものと交換できる手段として極めて価値が高いことは間違いありません。中でも私が最も交換価値が高いと考えるのが「時間」です。
したがって、限られた寿命の中で時間を無駄なく有意義に使うためには、時間にお金を投資することに抵抗はありません。ただし、お金自体は有限であるので限界があることも忘れてはならないのですが。
一方、健康状態が良くても悪くても、時間そのものの進み方には変わりはありません。しかし、健康であれば同じ時間を質が高く、有意義な使い方ができる可能性が高まります。
そのため、健康に良いことには積極的に時間を使い、健康を損なうことには時間を使わないよう心がけています。健康で質の高い時間を過ごすためにも、他とのバランスを考えながらお金を投資するようにしています。
加齢による時間感覚の変化
人生後半戦になると、時間が早く過ぎていくという人が少なからずいます。それは加齢により、行動や思考の速さが遅くなるためだとも考えられます。ときに、人によって経験の蓄積が遅くなる一因になっているかもしれません。
例えば、「行動の速さ=行動量÷時間」の式から考えれば、行動量が同じなら時間が増えれば行動の速さは遅くなります。
つまり、実際の行動の速さは遅くなっているのに、自分では速さが変わっていないと感じているため、経過する時間に違和感を覚えるのです。
この問題を解決するには、行動量を減らすか、行動の速さを上げるかの2つの方法があります。人生後半戦では行動量を減らすのが現実的でしょう。速さを上げるには、速さを補う技術などの習得を行えば可能になります。
加えて、労働現場では労働力の減少が生じていたり、高齢化社会で家族などの身近な手助けが減るような環境では、時間がより一層早く過ぎていくように感じられるでしょう。
新たなステージへ向けて時間の使い方を変える
人生後半戦では時間感覚の変化に対処する必要がある一方で、近年の社会環境の変化に伴い、人生後半戦における生き方自体も大きな転換期を迎えつつあります。
人生後半戦になり、「人生も長くないし、もう働きたくない」と考える人もいるかもしれません。しかし、戦後から平均寿命は約30年延びており、人生100年時代が到来しています。
かつては、義務教育修了後すぐに社会人となり、55歳までアナログ的な肉体労働に従事するのが一般的ですた。しかし現代では、20歳頃まで教育を受け、65歳まで多かれ少なかれデジタル化された職場で働くのが標準となっています。
もちろんアナログで働く仕事も多々ありますが、徐々に減りつつあるのが現実です。このような変化を人間味の喪失と考える人もいますが、それは人それぞれの捉え方で人間性が変わったわけではありません。
近年、前述のような一直線の人生設計から、複線的で多様な生き方が選択できるようになってきました。単に従来の考え方を否定するのではなく、個人の価値観に合わせて柔軟に選べる社会になりつつあります。
年金生活で人生を終えるのか、次のステージへ進むのかという選択の余地が出てきたのです。人生後半戦の時間は、人生の終焉へ向かうだけではありません。新たな活躍の場へとシフトする時代を迎えていると言っても過言ではないのです。
人生後半戦の時間の使い方は「自由度」の見直しから
人生100年時代を迎え、人生後半戦における生き方の選択肢が広がる中で、その時間の使い方については以下のようなステージ分けと捉え方が考えられます。
第1ステージ:50歳から65歳までの年金受給前のステージ 第2ステージ:65歳から健康寿命、または介護認定を受けるまでのステージ 第3ステージ:介護認定、または軽度認知症と診断を受けるまでのステージ |
必ずしも年齢と一致していない場合もあるし、だからと言って、すべての人が人生後半戦になると経済的自由度が高まったり、身体的制約や認知的制約が生じるとは限りません。
自分に合う時間の使い方のアドバイスとは
人生後半戦の時間の使い方のアドバイスとして、新しいこと、得意なこと、経験を生かせること、好きなこと、やりたかったことをやってみよう、という考え方があります。
これらは人生後半戦だけに当てはまるのではなく、すべての人に当てはまることです。人生後半戦においても、年齢に応じた適切な活動を心がけるべきです。
しいて言えば、人生後半戦の時間の使い方は、死ぬまで続けられる使い方が望ましいと言えます。
単純化した主観的な時間で構成する
時間はアナログ時計のように文字盤の上をぐるぐる回っているのではありません。時間は常に進んでいるのです。したがって、人生後半戦はやり直しできる回数は限られていのです。
私たちは、時間を時刻として客観的な時間の連続と考えています。実際には、連続している時間を目的に合わせて主観的な時間として区切っています。例えば、仕事時間、生活時間のようにです。
この主観的時間の組み合わせで人生は成り立っているのですが、人生後半戦になると組み合わせを変えることができずらくなってきます。
これを避けるためには、1日の主観的時間を細かくし、多種多様の組み合わせを行わないようにすべきです。例えば、今日は仕事の日、今日は家族の日、今日は自分の日のように単純化することです。
自由度のパターンと時間の使い方
1.時間の自由度:仕事、介護、家事など制約時間があり・なし 2.お金の自由度:就業、年金など継続した収入のあり・なし 3.行動の自由度:健康上の身体的制約、認知的制約などのあり・なし |
これらの組み合わせると8通りのパターンができ、人それぞれに時間の使い方に違いが生じます。しかし、人生後半戦になっても必ずしも時間の自由度が高くなるわけではありません。
また、これらのパターンは一時的なものであり、健康状態の変化などにより移り変わる可能性があります。
時間の自由度と時間の使い方
8パターンの中で、「時間・お金・行動」のすべての自由度がある場合は、自分で考えるのもよいし、多くのアドバイスの中から自分に合ったもにチャレンジするのがよいです。
全ての自由度がない場合は、基本的な価値観自体を見直す必要があるかもしれません。この記事での「時間・お金・行動」という設定は私の価値観に過ぎないのですから。
「時間」の自由度がない場合は、「お金」や「行動」の自由度を重視し、その中で「時間」の自由度に振り替えることで確保するのも一案となります。
そして、「時間」の自由度がある場合は、時間を「お金」と「行動」に変えることもできます。例えば、私の場合は、時間はあり、お金はふつう、行動は健康上の理由で制約があるので、次のような時間の使い方をしています。
時間をお金に変える手段として、体に負担の少ないネット上の作業で収入を得ています。健康上の理由による行動の制約は、体と頭を休める時間を毎日とるようにしています。睡眠時間は8時間、運動時間は30分、安静時間は3時間おきに1時間というようにです。
自らの変化を自覚し、人生後半戦の新しいステージを切り拓く
人生後半戦の時間の使い方は、人生前半戦のように思ったとおりにならないことが多くなります。その理由の一つとして、スピードが遅くなることが原因になっているのは前述の通りです。
なにより自分のスピードが変わることを自覚しなければなりません。変化を自覚し、遅いスピードで人生を送る方法を考えることが肝要です。
このように言うと、具体的なことを知りたいという人も多いのですが、人それぞれ過去の経歴も違えば、現在の環境も違います。ある人には適切なアドバイスでも、別の人にはアドバイスにならないこともあります。
人生後半戦は、何を基本にして生きていくかを考えることが最優先事項であり、重要事項です。時間の使い方も、人生後半戦の基本にしたがえば、有意義に過ごせるに違いない。
人生100年時代なのだから、一生同じ時間の使い方をするなんて、所詮、無理な話ではないのかな。