人生後半戦になると、自分を取り巻く環境の変化と自分自身の変化が気になりだします。
なかでも、1)健康状態、2)社会関係、3)生活様式の3つに絞り、前回の記事では健康状態と社会関係について取り上げました。
今回は「生活様式」についてお話しします。
老後の3Kと生活様式の違い
その前に、よく知られている老後の3Kとして「お金・健康・人間関係」または「経済・介護・孤独」があります。
健康状態と健康(介護)、社会関係と人間関係(孤独)は共通する部分がありますが、生活様式とお金(経済)との関係は、一見すると明確ではありません。
実は、この2つには深い関係があります。生活様式は、単に日々の過ごし方を指すのではなく、価値観や理想の反映でもあります。
そして、その価値観や理想を現実のものにするには、多くの場合、経済的な裏付けが必要になります。例えば、定年後の理想に「趣味の旅行を楽しむこと」があるとします。
これは生活様式の一部であり、「自由に旅を楽しむ」という価値観の表れです。しかし、この理想を実現するには、交通費、宿泊費、食費など、相応の経済力が必要です。
つまり、理想の生活様式を実現するためには、それに見合うだけのお金が必要なる場合が多くなります。
お金が生活様式を形作る?
一方で、興味深いのは、この関係が逆にも成り立つことです。経済状況が生活様式を形作ることもあります。
年金収入が主な収入源となる人生後半戦では、可処分所得が現役時代より減少することが一般的です。そのため、経済的な制約から、生活様式を見直す必要が出てきます。
例えば、毎月の固定費を見直し、外食や趣味にかける費用を削減する。あるいは、大きな一軒家からコンパクトな集合住宅に引っ越すなど、住環境を変える。
これらは、経済状況に合わせて生活様式を適応させる例です。ここで大切なのは、経済的な制約を単なる制限と捉えるのではなく、生活様式を見直す機会と捉えることです。
シンプルワイズ(SimpleWize)が提唱する「シンプルに考え、かしこく生きる」の真髄は、まさにここにあります。
制約が導く本質的な幸福
経済的な制約は、本当に大切なものは何かを見極める機会になります。高価なレストランでの食事が減ることで、家族や友人と自宅で料理を楽しむ時間が増えるかもしれません。
海外旅行の回数は減っても、地元の隠れた名所を探索することで、新たな感動に出会えるかもしれません。
つまり、経済状況に応じて生活様式を見直すことは、本質的な幸福を再定義することにつながります。
高齢社会の日本だからこそ、物質的な豊かさより心の豊かさを、消費よりも経験を重視する生活様式が生まれつつあります。
この変化は、日本が世界に示す新しいモデルになるかもしれません。なぜなら、日本以外の国々も、いずれ高齢社会を迎えるからです。
経済成長の鈍化と高齢化が同時に進む中で、いかに心豊かに生きるか、その答えを、日本の高齢者たちが、生活様式の工夫を通じて示しすという考え方もできます。
限られた資源と最大の幸福
生活様式とお金(経済)の関係は、単なる予算の範囲内で生活するという話ではありません。
それは、限られた資源の中で最大の幸福を見出す知恵であり、人生の後半戦をどう生きるかを問い直す機会でもあります。
高齢社会の日本では、物質的な豊かさと心の豊かさのバランスを取る術を世界に先駆けて模索しています。人生後半戦を迎えた世代は、まさにその重要性の矢面に立っています。
高齢社会で生きていくための選択や工夫が、日本だけでなく世界の未来の生き方を形作る可能性があるのです。
シンプルに考えることの重要性
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。次回からは次のテーマである「かしこく生きる」で、生活様式の見直し方についてお話していきます。
「生活様式」を「ライフスタイル」と言い表すことも多いのですが、ライフスタイルには「人生観」という意味もあり、さらに人生観の元となるのが個人の「価値観」です。
個人の価値観とは、一言で言いかえれば「自分らしさを貫く」ということにつきます。単に今までの自分に固執するということではありません。
むしろ、人生後半戦における変化を受け入れつつ、核となる本質的な自分自身を大切にすることです。
そのためには、これまでにお話ししてきた「シンプルに考える」という姿勢が不可欠です。同時に、「シンプルに考える」という視点が、社会全体を俯瞰する上でも大切になります。
「シンプルに考える」ことは、単に答えを簡単にするためだけでなく、本質を見極め、ひいては「かしこく生きる」ための土台となるのです。