人生後半戦の生活と暮らし方(1)~ 健康管理と社会的関係の変化に対応する

人生後半戦におけるライフステージと年齢

 

前回の「人生後半戦の仕事と働き方」でもお話ししたように、人生後半戦は大きく2つのステージに分かれます。年齢で分けると50歳から74歳までと、75歳以降の人生です。

75歳以降は後期高齢者医療制度に変わることから、「後期高齢者」という用語が定着しました。

制度としては前期高齢者という用語はなく、年金受給年齢が65歳であることから基準の一つになっています。

人生100年時代の人生後半戦を50歳からと考えると、50歳、65歳、75歳がそれぞれ区切りのように考えられています。

仕事と働き方ではこれらの年齢を基準に公的な制度や仕組みが作られています。生活と暮らしについては年齢を基準にした優待制度が、地域や事業者によるサービスの一環となっています。

人生後半戦の生活と暮らし方は、個々人が自分に合ったサービスを選べるという自由度があると言えます。

 

人生後半戦の3つの柱 – 健康管理・社会関係・生活様式

 

高齢社会での人生後半戦の生活と暮らし方で、3つの重要事項に関連付けてお話ししたいと思います。1つめは「健康管理」、2つめは「社会関係」、3つめは「生活様式」です。

老後の3Kと呼ばれる「お金・健康・人間関係」と似ていますが、お金の収入については「仕事と働き方」で、今後も引き続きお話ししますので、主に支出について「生活様式」としてお話しします。

「健康」は、自分の健康状態、体の不調への対処、介護と自立についてお話しします。「社会関係」は、家族から知人など人間関係全般と高齢社会における社会背景についてお話します。

そして「生活様式」では、人生後半戦のライフスタイル、ライフスタイルを維持するための支出、時間、場所についてお話ししたいと思います。

今回の記事では、それぞれの詳細ではなく、全体的な考えたが中心になります。

 

健康不安か、それとも老化現象か

 

何歳になっても健康を考えるのは誰しも同じです。「健康」とは健康状態を指すのですが、「自分は健康です」のように使うことが多く、この場合は健康状態が良いという意味になります。

健康状態が悪いときの原因として「病気」があります。病気以外にも、栄養不足、睡眠不足などが原因になっているかもしれません。また、病気が一時的か慢性的かによっても健康状態は異なります。

一般的に、人間は肉体的な成長期のピークを20代でむかえ、健康状態を維持して年を重ねていきます。人生後半戦をむかえるころには、個人差はありますが、健康不安と老化現象が同じような症状で現れます。

初期症状が同じでも一時的なものか、慢性的なものかによって、病気なのか、老化なのかという判断をします。自己判断で判断する場合もあれば、専門的な検査を受ける場合もあります。

この流れを理解せずに、健康管理やアンチエイジングを行っても、期待できるような効果は生まれません。むしろ逆効果になって悪化させてしまうこともあるかもしれません。

 

適切な健康管理の手順とホーム・ヘルス・マネジメント

人生後半戦の健康管理は、老化現象と健康不安の初期症状の知識を学ぶことから始まります。初期症状は生活習慣で改善ずる場合もありますが、長期化するようであれば専門的な検査を受けるべきです。

日本の医療は専門科として縦割りになっているために、総合病院で検査を受けることを勧められます。ホームドクターのような「かかりつけ医制度」は、まだ普及していません。

人生後半戦になったと思ったら、まず、総合的な検査を受けるようにしましょう。異常がなくても、その後も定期的に、健康状態を記録することが肝要になります。

今後の健康管理は、家庭に健康管理機器を設置したり、体にセンサーを装着することによって、外部で健康管理の記録を取るようになるでしょう。

ホームドクターの代わりに、ホーム・ヘルス・マネジメントのようなシステムが普及することで、健康不安や病気治療の次の段階である介護予防や認知症予防も可能になるでしょう。

 

高齢社会におけるコミュニケーションの変化

 

人は誰しも、豊かな人間関係を求めています。同時に、一人の時間を大切にしたいという気持ちも人にはあります。

しかし、コミュニケーションの手段が一堂に会して同時に伝える直接対面から、通信手段の発達によって、個別に時間差で伝えることが可能になりました。

コミュニケーション方法が多様化することで、単に年齢を重ね、直接対面を繰り返すことで、人間関係が自然と広がるわけではなくなってきました。

本当に大切なのは、人間関係の「広さ」か「深さ」ということではなく、「広さ」から多様性を学び、「深さ」から質の向上を学ぶことです。

人間関係は社会構造によっても変わります。日本では高齢社会が進み、人口構造に年代別の偏りが生じています。主なコミュニケーション方法も年代別に異なり、コミュニケーションギャップが生じています。

戦後から1990年代までは、マスメディアを中心とした一方向の情報伝達が盛んになった一方で、人間関係を深めるための双方向のコミュニケーションとは異なるものとして社会に浸透しました。

 

孤立防止に向けた双方向コミュニケーション

情報をただ受け取るだけでは、決して深い絆は生まれません。特に人生後半戦の高齢期には、このような一方向の情報交換が、形だけの人間関係につながる危険性があります。

ひいては孤独感や、人とのつながりを失った孤立状態へとつながりかねません。孤独自体に問題があるわけではないですが、全く絆のない孤立は避けるべきです。

そこで重要となるのが、コミュニケーションを「1:1」と「1:n」に分けて考え、それぞれに適したコミュニケーションの手段を選ぶようにします。

前の「1」は自分で、後の「1」は相手です。「n」は複数、つまり社会を表します。「n」が特定の人だったり、少ない場合もあれば、不特定多数の場合もあります。

人生後半戦のコミュニケーションの変化の多くは、「1:n」の時に表れます。自分が変化することには寛容でも、「n」すなわち社会の変化へ対応することができなくなる自分を認められなくなります。

 

社会の変化に対応したコミュニケーション

 

人生後半戦のコミュニケーションは、社会の変化に応じたコミュニケーションの方法を用いることが必要になります。コミュニケーションとは事実や考えという「情報」を交換することです。

情報には発信者と受信者、そして情報を仲介する媒体の3つがあります。これら3つに携わる人のすべてが社会の変化に応じることができなければ、情報の交換はできません。

または、それぞれの人が対応できる手段を用いなければ、すべての人と情報交換できません。つまり、新旧の情報手段すべてに対応しなければならなくなります。

 

コミュニケーションギャップを解消するために

また、発信者と受信者は、同じ知識を持ち合わさなければ情報を交換できても、その内容を理解できません。言葉が違えば意味が分からないのと同じです。

これらの食い違いをできるだけ少なくするためには、本来であれば新しいものに合わせることが理想的です。しかしながら、人口が増えるにつれて、新しいものを生み出し、取り入れる若年層は少なくなっています。

今後、将来に渡って、人口構造の高齢化率は一定の割合で推移するので、このままではコミュニケーションも多様化し、複雑になっていきます。

コミュニケーションには最低限のルールが必要になります。例えば、社会生活に必要な用語、コミュニケーションに必要な機器操作、人間関係上の道徳やモラルなどです。

 

これから直面するコミュニケーションの課題

 

人間社会が現在のように発展してたきたのは、他の生物と比較して、高度なコミュニケーションをとってきたからです。世界的には人口増と地球環境が問題になり、コミュニケーションで相互理解を求めていますが、問題解決に向かっているとは言えません。

日本国内では、人口減と高齢社会という人口構造が、経済、産業、社会などに影響を及ぼしていると考えられています。このような世界情勢と国内情勢を考えるたびに、コミュニケーションの不協和音を私は感じています。

日本国内の人生後半戦だけに絞って言えることは、現在の高齢社会の問題点だけではなく、将来の高齢社会に向けての問題について議論されていないことに危機感を感じています。

 

多様性を超えた問題解決に向けて

人口が増えれば、考え方も増え、多様化することは避けられません。そこで必要になるのが、多様化から共通の問題点を絞り込むことになります。

シンプルに考えれば、一度にすべての問題を解決することはできないので、絞り込むことが重要であり、期限を決めて対応することが必須になります。

そのためには、同じ年代のコミュニケーションではなく、未来の高齢者、すなわち世代間を超えたコミュニケーションをとることが重要になります。

そのためには、世代間に共通するコミュニケーションの手段とコミュニケーションに使う用語を学び、同じ目的を持つことが重要になるのではないでしょうか。