人生後半になり、これまで積み重ねてきた経験や知識は豊富かもしれません。ただし、変化の激しいVUCA時代、複雑な思考だけでは結果を出すことが難しくなっています。
高齢社会において、長い人生後半戦を今までと同じように生き抜いていくのは難しいと感じている人も多いのではないでしょうか。
そのような時代だからこそ、必要となるのが「シンプルに考える」ことであり、導き出される結果もシンプルでなければなりません。
思考と行動のギャップを埋める「動機づけ」の重要性
一般的な「思考と結果」を単純に表すと次の図になります。
思考 → 結果 |
「思考」から「結果」に直接結びつけるのでななく、行動に移して初めて「結果」が出ます。同じように図に表すと次のようになります。
思考 → 結論 → 行動 → 結果 |
上の図には重要なことが抜けています。それは、結論と行動の間に入る「動機づけ」です。いくら良い考えが浮かんでも、行動に移さなければ結果は出ません。
思考 → 結論 → 動機づけ → 行動 → 結果 |
このように思考から結果まで一直線に順を追って進む以外にも、考えながら行動する、思考と行動が並行して行われる場合もあります。
このようにいくつかのステップに分けると論理的にはつじつまが合いますが、それぞれのステップが終わるまで次のステップに進めないという弱点があります。
また、思考から結果までに時間がかかるので、計画や戦略を練る時にはよいのですが、すぐに「結果」を出さなければならないときには不向きです。
「思考」から「結果」までの時間をできるだけ短く、また「結果」から伝えるためにはどのようにすればよいのでしょうか。
なぜ「結果」から伝えるのか
まず時代背景が大きく影響しています。現代社会は、情報過多、選択肢の多様化、目まぐるしい変化など、複雑さを増しており、過去の経験と知識だけでは「VUCAの時代」に対応することが難しくなっています。
不確実で複雑、不透明で曖昧な社会情勢に対応するには、柔軟な思考と決断から行動につなげることが求められ、そのために「結果」から伝えることが必要となっています。
もう一つの時代背景の変化として、日本の高齢社会があげられます。 2023年1月現在、65歳以上の人口は29%、50歳以上の人口は49%に達しています。
このような社会では、世代間の格差が生じ、新旧の考え方が対立することもあります。 互いの理解を深めることも重要ですが、同時に、時代に合わせて考え方を変えることも必要です。
そのためには、「結果」から伝えることが有効です。 結果を先に示すことで、理解しやすくなり、行動を促すことができます。
高齢社会における思考方法の変化
社会の劇的な変化に並行して個人の加齢による老化現象も現実的な問題となります。加齢による変化は肉体的変化だけでなく思考力にも影響します。
記憶力と計算力、処理能力や注意力、柔軟性や理解力などの低下、論理的判断よりも経験的判断に偏りがちになり、総じてコミュニケーション能力に現れます。
このようなときも「結果」を先に示すこと思考を促し、何が分からないのか、何が不安なのかを明らかにしながら説明することができます。
前述のとおり「思考→動機づけ→行動」において、世代間の格差は思考のギャップに大きく表れ、動機づけや行動、行動による結果までたどり着かないこともあります。
コミュニケーションは双方向に行われますので、伝える側も伝えられる側も、このような思考法を身に付け、シチュエーションに応じて変えていくべきではないでしょうか。
高齢社会は社会保障費の増加が大きな問題として扱われますが、社会の変化に対応できない考え方やこだわりこそが、問題の解決を拒む原因になっているのかもしれません。
状況に応じた「シンプルに考える」5つのポイント
「シンプルに考える」はコミュニケーションを行う双方が身に付けることで効果がでます。そのためには、まず「シンプル」と「考える」の意味を共有することが必要です。詳しくは次の記事で説明します。
1.「シンプル」の意味は3つある
「シンプル」には、大きく分けて3つの意味があります。1.簡単、2.少ない、3.単純は、他の言葉に置き換えたり、肯定的な意味だけではなく、「シンプルすぎる」のように否定的な意味でも使われます。
2.「考える」の意味は2つある
「考える」には、テーマやアジェンダに沿って論理的に解を導く働きと、自由にアイデアを掘りおこす働きがあります。後者は「思う」に近い働きで、必ずしも解に導く必要はありません。
3.「シンプルに考える」の意味は5つある
「シンプルに考える」は単に情報を単純化することではありません。状況に応じて5つの意味を使い分けることで、より効果的なコミュニケーションを実現することができます。
1.情報整理と要約、2.論理的思考、3.創造的発想、4.簡潔な表現、5.本質を見抜く力、の5つの意味が、実際の「シンプルに考える」の内容です。
「シンプルに考える」は、冒頭に説明した「結論、動機づけ、結果」が、それぞれシンプルであることが理想です。
そのためには、知識とノウハウが必要ですので、次の記事は「シンプルに考え,「結論と動機づけ」が行動へと働きかける」となります。
過去から現在を考えるのではなく、未来から遡って現在を考えるということができない人が多い。
未来は現在の積み重ねではあるが、過去の積み重ねだけでは未来は現在と同じになる。
であれば、理想の未来から遡って現在を見てみたらどうだろうね。