「シンプルに考える」を「超シンプルに考える」へ加速させる

 

前回までに、なぜ人生後半戦にシンプルに考えることが重要かシンプルに考えるための方法について説明しました。

そして、「思考→結論→動機づけ→行動→結果」の流れの中で、「動機づけ」が重要な役割を果たすことに触れました。

今回は、人生後半戦には加齢によって思考力と体力が衰える以上に動機づけが弱くなること、動機づけを強めて行動力に結び付け、良い結果を出す方法についてお話しします。

 

AI・ロボット時代に必要なのは「シンプルに考える」力

 

人生後半戦だから、加齢による思考力の衰えがあるから、という理由で「シンプルに考える」ことを推奨しているわけではありません。

現代社会は変化のスピードが速く、何事にもスピード感が求められています。しかし、世界全体で社会の高齢化が進んでいるため、時代のスピードと社会のスピードにギャップが生じています。

シンプルに考えることだけで、このスピードギャップを簡単に埋めることはできませんが、シンプルに考えないことによって、時代と個人とのギャップが広がることは否めません。

AIやロボットが人間の能力を超える時代が到来し、社会の中心になることを恐れる考え方もあります。しかし、このような考え方は、AIやロボットには動機づけができないことを忘れてしまっています。

人間は加齢によって思考力、体力、行動力は衰え、動機づけする能力が弱くなります。しかし、AIやロボットが人間の代わりに動機づけを行うことは難しいのです。

AIやロボットが人間の能力を超える現実を認め、AIやロボットにできない動機づけを人間が行うためには、「シンプルに考える」が不可欠なのです。

 

AIとロボットにはシンプルな結論と動機づけができない

 

シンプルに考えることは、「単純に考える」ことではありません。

単純に考えるとは、単一の情報のみで、他の情報と比較せず、選択する過程を経ずに考えることです。

一方、本来の「考える」とは、複数の情報を比較し、選択しながら組み合わせ、自分自身の考えとして確立することです。この過程を行うことによって結論を導き出します。

前述のような「単純に考える」ことは思考の途中であり、シンプルな結論のように思えても、十分な検討がされていない単純な結論となるため、動機づけには結びつきません。

「シンプルに考える」で最も重要なのは、本質を見出すことです。本質を見出すことで、シンプルな結論を導き出すことができます。

さらに、シンプルな結論を、目や耳、体で感じられるように、言葉、図、体の動きなどで示すことで、動機づけにも結び付けられます。

 

超シンプルに考える「T‐T‐T」とは

 

前述のとおり、「思考」から「結果」までの流れは、「思考→結論→動機づけ→行動→結果」としてきました。この流れを短縮することで、超シンプルな考え方が可能になります。

それが、「T-T-T」と呼んでいる私が呼ぶ3ステップの考え方です。

T-T-Tは、「思考→(結論→動機づけ→行動)→結果」という従来の流れを、「思考→試行→検証」という新たな流れに変えたものです。

それぞれのステップは以下のとおりです。

思考:情報やデータを選択・比較し、組み立てて本質的な結論へ導く
試行:結論を導いた後、言葉、図、体の動きなどに変え、プロトタイプを作成する
検証:思考段階と試行段階の整合性を検証し、不整合部分の修正を繰り返す

試行の結果が成果として認識できたときに最終結果とします。成果とは良い結果を意味しますが、否定的な中止や断念せざるを得ない結果もありえます。

T-T-Tで重要なのは、思考の結論を言葉にすることです。言葉は行動に影響を与えることが多くの格言で示されています。「〇〇〇を行う」のように現在形で表現することで動機づけになります。

同様に、最終的な結果は「〇〇〇ができる」と表現すると、成果としての意味が強くなります。実際にこの段階での結果を製品化や完成品とすることは別次元のことになります。

このように、「思考(Think)→試行(Try)→検証(Test)」という3つのTを「T-T-T」で表し、超シンプルに考えることを可能にします。

 

「シンプルに考える」ための注意事項

 

シンプルに考えるとは、単に思考を簡略化するだけでなく、実現可能な結論に結び付けることです。

以下の4つの注意事項を意識することで、シンプルで意味のある思考を実現できます。

1.実現可能性を意識する

机上の空論やアイデアは、実現可能性がなければただの世間話です。考え出した結論が現実的に実行可能かどうかを常に意識しましょう。

2. 時間制限を設ける

ブレインストーミングのようなアイデア出しでも、時間制限を設けることで無駄な思考を減らし、効率的に結論を導き出すことができます。

3. 結論まで責任を持つ

「あとは任せた」では思考は完結しません。実行可能なレベルまで具体化し、責任を持って結論まで導き出すことが重要です。

4. 堂々巡りを避ける

同じ思考を繰り返す堂々巡りは時間の無駄です。思考の整理や視点の転換を行い、新たな突破口を見つけるようにしましょう。

会議やミーティングのように複数の人で考えるときも、自分一人で個人的なことを考えるときも同じです。一人で考えるときは、自分の思考パターンを理解することも重要です。

シンプルに考えるためには、無駄な思考を排除し、本質的な要素に集中することが重要です。シンプルに考えることは、仕事やプライベートなど、あらゆる場面で役立つスキルとなります。

 

次回は、「シンプルに考える」の例として、人生後半戦に誰もが共通して課題となる「健康と老化」について私の場合を例にしてお話しします。

 

 

マザー・テレサは言った。
「思考に気をつけなさい、それは、いつか言葉になるから。  言葉に気をつけなさい、それは、いつか行動になるから。」
若いころと言っても、5年ほど前まで、私は「言葉にしなくても、信念があれば行動できる」と思っていた。
最近は言葉にして、声にしたり、文字にしたり、さらに人に聞いてもらい、見てもらったほうが、実行度が違うことがわかった。
もっと若いころから行なっていたら、違う世界が見れたかもと思う。