プロローグ(2):「人生後半戦」とは自分自身で作る人生後半のステージ

05.人生後半と年齢の考え方 ~ 年齢を基準にした社会の制度で決まる?

 

まず「人生後半」ではなく「人生後半”戦”」としたのは、年齢で区分を行うのが「人生後半」であり、人生後半に新たなステージ(段階)に上がることを「人生後半戦」という意味に含ませています。(イントロダクションより)

 

人生後半が何歳から始まるかは人によって異なる、と言いたいところですが、寿命が人それぞれで異なるため、本当のところ、人が死ぬまでそれを知ることはできません。

一般的には、社会の制度によって人生後半が定められると考える人が多いです。その社会制度の区切りは年齢で決められています。例えば、65歳が定年なら、65歳からが人生後半と考えることができます。

他にも、人生100年時代と言われているので、50歳からが人生後半と考える人も多いでしょう。私も「人生後半は50歳から」という考え方の1人です。

いずれにせよ、人生後半は年齢で決まることには変わりはなく、自分で決めるのではなく社会の制度や情勢から決まっているということも変わりません。

さらに、平均寿命や平均年齢、年齢中央値からも考えることができます。2020年から2022年のデータをもとに考えると、以下のようになります。

日本の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳です。ただし、男性が81歳になった時の平均余命は約8歳、女性が87歳になった時の平均余命は約7歳です。したがって、人生後半は男性が約45歳、女性が約47歳から始まると考えることもできます。(下欄参照)

また、日本人全体の平均年齢は48.75歳であり、年齢中央値は48.4歳です。(下欄参照)

そのため、50歳になると人口の半分は「自分が人生後半に差し掛かった」と感じている人が多いのも納得します。

 

06.日本の人口動態と人生後半の整合性はない ~ 団塊の世代と団塊ジュニア

 

人口動態グラフ

 

日本の人口動態を見るのによく使われるのが、人口ピラミッドという人口構造図と高齢社会白書などで使われる人口構造の推移を表したグラフです。(下欄参照)

人口ピラミッドに人生後半が始まる年齢を重ね合わせると、必ずしも人口が多い年代とは一致しません。人口構造を歪(いびつ)にしているのは、人口が多い団塊の世代と団塊ジュニアの世代です。

団塊の世代より団塊ジュニアの世代の方が人口が多くなるのは、男性が2025年頃、女性が2030年頃となります。にもかかわらず、2025年の年齢中央値が49.8歳なので、人生後半が50歳からという設定もいっそう妥当性を帯びてきます。

人生後半にこだわる理由は2つある。1つめは、「教育-仕事-引退」という人生モデルは、引退までに人生の8割以上が終わった時代の政策的なモデルでした。

これに対して人生100年モデルを3パターンのステージではなく、「マルチステージ」として考えるべきだという人生モデルが提案され脚光浴びました。(下欄参照)

日本においてマルチステージを行うには、既存の年功序列や終身雇用が障壁になるだろうと言われましたが、既存の人生モデルで成り立っている現在の高齢社会でこの考え方はなかなか浸透しません。

ならば、せめて人生を前半と後半の2つに分けてはどうかというのがシンプルワイズの考え方です。

 

07.団塊世代と団塊ジュニア世代 ~ 人生後半のアプローチと考え方の違い

 

生産年齢人口と労働力人口

 

2つめの理由は、日本の人口構造に団塊の世代と団塊ジュニアの世代の2つの最頻値が存在することです。この人口構造の特性は経済や社会に直接的、間接的に大きな影響をもたらしています。

この2つの代表的な世代を例にとると、人生後半において大きな違いが生じています。例えば、団塊の世代では年金を軸にした生活設計が一般的でしたが、団塊ジュニアの世代では実質的な年金減額が発生するため、新たな収入源の必要性が高まっています。

社会環境が変わることで社会制度にも歪が出てきています。社会との交流方法においても、団塊の世代は同調圧力を重視していましたが、団塊ジュニアの世代では個人を尊重する関係を社会に求めています。

人生後半の展望においても、団塊の世代は引退を前提にして人生設計を立ててきました。団塊ジュニアの世代は団塊の世代を同じく一定の年齢で就業を離れることには変わりありませんが、その後も新たな就業を人生設計に組み込むようになっています。

これらの違いは高齢社会白書の「世代別金融資産分布状況」や「労働力人口の推移」からも読み取れます。(下欄参照)また、前項の「人口ピラミッド」や「高齢化の推移と将来推計」からは15~64歳までの生産年齢の減少していますが、「労働力人口の推移」からは労働力人口は増加してることがわかります。

これは人口増加に合わせた社会構造と制度が、現在の社会環境には適していないことが1つの原因となっています。経済モデルを基盤にした労働モデルや生活モデルにも影響を与えていることは否めません。

人生後半は人生という時系列の後半には変わりありませんが、「人生後半”戦”」として新たなステージ(段階)に入ったことを強く認識しなければなりません。

 

08.人生後半戦というステージ ~ 未来予想と将来予測、そして正解はない

 

「人生後半は年齢で決まり、豊かさはお金で決まる」と考えている人も多くいます。実際には年齢もお金も単なる数値でしかありません。同じ年齢で同じ金額のお金を持っていても、同じように生き、同じように感じるとは限りません。

人生後半戦の「戦」は戦いではなく、人生のステージ(段階)を意味しています。人生のステージは前半と後半の2つだけではなく、いくつものステージがあります。また人生のステージは、社会の仕組みの一環としてのステージと自分で作るステージがあります。

人それぞれで細かくステージに分けるのは可能ですが、基本的な区分は2つで計4つに分類できる。1つは50歳以上の人生後半と50歳未満の人生前半、もう1つは男性と女性の区分になります。ただし、区分は設けても個人差があるので自分が属する分類先は自分で決めるべきです。

自分が属する分類が決まったら、現在のステージを確認し、次のステージの構想があれば「人生後半戦」に上がることはできます。しかしながら、男女の区分は寿命の性差と肉体的な性差で認めなければならなりません。

「人生後半戦」というステージは自分で作るのですが、人生後半が人生前半と同じ時代環境ではないので、ステージを作るにあたり最初に行うのが「未来予想と将来予測」です。

予想は自分だけではなく他の人の予想に頼ってもよいのですが、予測は自分で行わなければなりません。他の人の予測を信用する場合であっても、人生後半戦への取り組みは、最終的には自己責任であることは変わりがありません。

 

 

私は人生後半の男性であり、そのために偏った考え方をしているかもしれません。私の考え方がすべて正しいとも思っていないどころか、むしろ正解はないと思っています。
「不安なき理想はなく、理想に不安はつきもの」です。