豊かな人生を築くために、「人生後半戦」も自ら学び続ける

現代社会では価値観が変化 ~「一生懸命」から「多様な経験」へ

 

かつての「人生は一度きり」という考え方は、人生の貴重さを強調する一方で、固定的な生き方を示唆してしまう可能性があります。しかし、現代社会では、「人生は一度でも、生き方は変えられる」という考え方も広く受け入れられています。

「人生100年時代」では、100年後をゴールとするのではなく、より短期間で目的や目標を設定し、柔軟な生き方を選択することが可能です。

「一生懸命」や「一所懸命」という言葉は、一生懸命に努力することや一つのことに専念することを意味していました。しかし、現代社会では、多様な経験を積み重ね、自己の可能性を追求するという価値観も認められています。

人生100年時代だからこそ、人生をいくつかに分けて目的や目標を持った生き方が時代にあっています。特に、人生の前半と後半は価値観が変わる可能性があり、分けて考えたほうが目的や目標を見失わずに生きられると言えます。

人生前半は学びが中心になり、人生後半は学びを活かす時期になります。自ずと目的も目標も変わります。詳しくは事項で説明します。

人生は一度きりですが、生き方は一通りではありません。「人生100年時代」という新しい時代を自分らしく生きるために、多様な生き方を選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。

 

人生の前半と後半で異なる価値観と目的を俯瞰する

 

人生の前半と後半は明らかに異なる特性を持っています。前半は成長と発達の時期であり、後半は成熟と自知の時期となります。

日本の社会では、20歳代までに教育を終えて働き始め、40歳代までに公私ともに安定を図り、50代以降は若い世代への教育と指導に力を注ぐという暗黙のひな型が存在します。

さらに50代以降の人生についても、退職と第二の人生の後、余生を過ごすというステレオタイプを当たり前のように考えている人もいます。

しかし、このような考え方は、科学技術の進歩とともに時代に適さなくなっています。個人が自身の選択や価値観に基づいて人生を築くことが求められる現代において、ステレオタイプのひな型を社会制度として維持することは、歪みを生む原因となっています。

この歪みを解消するためには、社会全体での意識改革が必要です。世代ごとに異なる視点で人生全体を俯瞰し、個々の選択を尊重することが大切です。

 

人生100年時代は学びの連続である

 

人生前半は成長と発達の期間と言えます。20歳代までには「学ぶ」ことを学び、個人的な成長と発達を促すステージです。

次のステージは「働く」ことを学び、社会的な成長と発達を遂げていくステージです。公私の違い、経験とスキル、経済的自立を学び、人生の中間点である50歳まで続きます。

50歳を人生の中間点として考えると、今までの人生の棚卸しを行うという考え方があります。しかし、50歳は中間点であり同時に通過点に過ぎません。50歳以降も学び続ける意思が必要です。

50歳から始まる人生後半は、人生前半の他から学ぶ姿勢ではなく、自ら問う姿勢が重要になります。自分を知り、自分の力で新たな知識やスキルを会得する学びが求められます。

50歳からは成熟と自知の期間になり、人生前半の多様化と異なった専門性の有無が成熟度の尺度になります。また、個人の成長よりも社会の発展に貢献することが求められます。

人生100年時代においては、学び続けることがより重要になります。新たな技術や情報が日々生まれ、社会や職業の形が変わり続ける中で、自己の成長と適応を続けるためには、終身学習の意識を持つことが重要です。

 

現実的な変化への自己判断 ~ 社会保障制度の役割とQOW

 

50歳から始まる人生後半は、前述の成熟と自知とともに現実的な変化に対して自己判断が求められます。
役職定年、退職、退職後の仕事、年金受給、介護第1号被保険者、長期ローンの支払いなど、人生後半のイベントが続きます。

さらに、50歳の時点で両親が75歳以上の後期高齢者になることを想定すると、両親の医療補助、介護補助、生活補助などの経済的負担や時間的負担が発生します。

75歳からは、自分自身が後期高齢者という新たなステージなります。このステージでは、年齢よりも生活環境が人生の在り方に大きく影響してきます。

この時期には、自分自身の健康状態や生活環境、社会との関わり方など、QOW(Quality Of Well-being)を高めるための要素が重要になります。

社会保障制度も、これらの要素を考慮に入れた上で、個々の人が自分らしい人生を築くことを支えるべきです。年金制度、医療制度、介護制度などは、人生後半のQOWを高めるための重要な支えとなります。

しかし、これらの制度もまた、科学技術の進歩や社会の変化に対応するために、柔軟に変化し続ける必要があります。

 

 

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人生を年齢で区切ったり、前半と後半で分けることは、本来は適切ではありません。しかし、古くから年齢で人生を表す格言や名言が残っています。
これらの言葉は、いつの時代も生きている限り向上心を持ち続ける重要性を説いていると思います。向上心を持ち続けるためには、生涯を通じて学び続けることが必要です。

かつては人生の経過地点とされていた50歳は、現在では人生後半のスタート地点となりました。人生後半では、何をするか、どう在るべきかを考えると同時に、「なんのために」を考えることで「人生後半戦」としての価値が出てくると思います。