「VUCAの時代」と重なる人生後半をどう生きるか

いままさに「VUCAの時代」と呼ばれる現代において、人生後半を迎えていることは、坂道で背中を押されるようなものです。とても危険な状態というよりは、とても不安定な状態です。

VUCAの時代とは

 

「VUCA(ブーカ)」とは、もともとアメリカの軍事用語でした。1990年代にアメリカとソビエトとの冷戦が終わり、アメリカ軍が戦略を練るにあたって、世界の状態を表したアクロニム(頭文字をつなげた語)です。

2000年以降に世界が国家間からグローバル化することにより、一部の企業が多くの国の経済に影響を与えるようになり、経済社会情勢を表すときにも「VUCA」が使われるようになりました。

Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字です。それぞれの意味を簡単に説明します。

Volatility(変動性): 変化が想像以上に早く、予測が難しい 例)AIの発展
Uncertainty(不確実性): AだからBという明確な因果関係がない 例)戦争の勃発
Complexity(複雑性): 構成する要素が多く複雑になる 例)ビッグテックの台頭
Ambiguity(曖昧性): 変化の激しさにより現状が曖昧になること 例)不透明な未来

VUCAの時代においては、過去の経験や知識だけでは対応できない新しい課題や問題が多く発生します。したがって、過去から現在に至るまでの分析手法では、未来を予測しずらくなったとも言えます。

人生後半を迎えることは、VUCAの時代においては、とても不安定な状態です。社会的には過去の制度を見直す必要があり、個人的には過去の経験を見直さなければならない時代になったのです。

日本は高齢社会を迎え、50歳以上の人口が49歳以下の人口に迫っています。総人口の減少が進むため、高齢者の人口が変わらなくても高齢化率は上がっていきます。

高齢社会が常態化することを考えれば、高齢者と高齢者を支える世代の両方が活躍できる社会を作る必要があります。

 

社会制度を変える前に、考え方を変える

 

高齢社会に対応するためには、社会制度全体を俯瞰して、何を優先すべきかを検討する必要があります。高齢社会とは高齢者だけの社会ではなく、高齢者を支える世代も存在します。

高齢者を優遇すると、高齢者を支える世代の負担が必ず増加します。その影響が高齢者を支える世代の負担の増加を上回るメリットがなければ、社会全体としては良い方向に進んだとは言えません。

高齢者の負担を大きくすると不満が募り、政治や社会に対する不信感が高まり、社会の分断につながる可能性があります。

また、高齢者を支える世代の将来の不安が生じると、経済活動への意欲が低下し、経済成長が鈍化する可能性があります。

シンプルワイズでは、高齢者の考え方を変えることが、社会制度を変えるための第一歩になると考えています。

さらに、まだ教育学習世代にとっては、自分たちの考えが十分に反映されないと感じるところで制度が変わるのですから、社会に対する不信感が強まるかもしれません。

社会制度を変えるためには、高齢者だけでなく、高齢者を支える世代や教育学習世代の意見も聞く必要があり、日本という国がこれからどのような社会を目指すかを示す必要があります。

具体的には、高齢者の年金や医療費の自己負担の見直し、高齢者を支える世代の税負担や雇用の安定化、教育学習世代の教育費や就職支援など、各世代のニーズに応える政策を実施することが必要で

これらは政治の仕事ですが、政治に影響力があると言われているのが高齢者ですので、まずは高齢者が考え方を変えることが改革の一歩となります。

 

VUCA時代の高齢社会における人生後半世代の役割

 

VUCAに時代とは、先行きが不透明で、予測が困難な時代であることは前述のとおりです。そして、高齢社会に合わない社会制度のままであるのが現状です。

高齢社会に対応するためには、年金や医療、介護などの社会保障制度の見直しなどの対策が必要ですが、VUCAの時代では、これらの対策が十分に機能しないことが大きな問題となっています。

このような時代に人生後半に位置するシニア世代(50歳~75歳)とシルバー世代(75歳以上)どのように考え、生きていけばよいのでしょうか。

人生後半になる当事者として関係する社会保障が増えます。65歳からの年金受給と介護保険の被保険者、75歳からの後期高齢者医療の3つがあります。

ここではそれぞれの制度については詳しくは触れませんが、これらの制度は、保険料や税金、積立金の取り崩しによって賄われています。

経済活動による社会への影響は、人生後半世代より人生前半世代が大きいのは周知ですが、人生後半世代は預貯金保有額や持ち家保有率が高い傾向にあります。

その他にも人生後半世代では、年金受給者への所得控除が大きく、75歳以降の非課税世帯が40%以上を占めるなどの特徴があります。

 

50歳から75歳の世代

50歳から75歳の世代は、生活習慣病や重大疾患に罹患する割合が高くなり、医療費の負担が増えます。また、65歳からは介護保険の被保険者となるため、老後の生活と資金を計画的に準備しておく必要があります。

さらに、社会構造が三世代から四世代に変わることによって、この世代が、75歳以上のシルバー世代の家族の介護を担う可能性も高まります。厚労省の2023年の調査では、老々介護が6割を超えています。

一方で、年金の受給開始年齢の延長や再雇用制度の拡充により、65歳で年金暮らしをする人は減少し、多くのシニア世代が働き続けています。リスキング、リカレント教育、学び直しも行われていますが、エッセンシャルワーカーとして活躍しているシニア世代も少なくありません。

 

75歳以上の世代

75歳以上の世代は、健康状態や体調によって生活の充実度が大きく変わります。加齢による不調や心身の不調に悩まされると、生活の質が低下します。

医療と介護が必要な生活になっても、後期高齢者医療と介護保険で経済的な負担は軽減されますが、医療と介護の人材不足により、サービスの質や受給までの時間が長くなる可能性があります。

一方で、健康状態が良ければ、働いたり、ボランティアをしたり、趣味や娯楽を楽しんだりと、余生を充実させることができます。つまり、75歳以上は「心身の健康状態」が最も重要になります。

 

高齢社会こそVUCAそのもの、前例のない社会に対応するには

 

高齢社会とは、高齢者中心の社会ではありません。社会全体を見渡し、自分がこれからの社会のどの部分で貢献できるかを考え、行動するかという未来観が大切です。

現段階では、このような社会環境をどのように変えるのではなく、まず高齢者自身が現在の高齢社会という環境を認識することが最重要課題だと考えます。

 

 

一口に高齢者が総人口の3割を占めると言っても地域格差もあります。秋田県は高齢化率が38.6と高く、一方で東京都が22.8、沖縄県が23.5と低くなっています。
しかしながら、2045年の予測高齢化率を見ると秋田県では2人1人が高齢者となります。自分が住んでいる自治体の高齢化率をご覧になってみてください。

「地域別に見た高齢化」 令和5年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/s1_1_4.html